再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
時刻は午後七時。
この時間からあまり凝ったものは作れない。
「なにがいいかな……」
斜め上のあたりを見つめながら考えるような表情を見せる加賀美さん。しばらくしてなにか思い付いたのか私に視線を戻した。
「千晶ちゃんの作るカレーがいい」
「カレー?」
「佐波さんから聞いたことがあるんだ。千晶ちゃんのカレーは絶品だって。俺まだ食べたことないから」
そういえば加賀美さんがうちで食事をするときにカレーを出したことがなかった。
いつも彼は父とお酒を飲みながら食事をすることが多くて、それに合う料理を振る舞うようにしていたから。
「わかりました。カレーですね」
「楽しみだな。俺も手伝うよ」
「いえ、加賀美さんは休んでいてください」
夕食作りは毎晩ベッドを貸してもらっているお礼だから、加賀美さんに手伝ってもらうわけにはいかない。
このあと立ち寄るスーパーでなにを買おうかと頭の中で整理していると、電車が停車駅に停まった。
降りる人はいないが、杖をついた七十代ぐらいの年配女性が乗り込んでくる。
席を探しているようだがすべて埋まっていた。
優先席に座る人たちは寝ているか、耳にイヤホンをつけてスマホ画面を見ていて席を譲ろうとする素振りを見せない。