再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています
近くに座る場所がないと諦めたのか、年配女性は立ったまま座席の端に設置されているポールを掴んだ。それを見て、少し遠いけれど私の席に座ってもらおうと思い、声を掛けようと腰を浮かしたときだった。
隣に座る加賀美さんがすっと立ち上がり、年配女性のもとへと向かっていく。
電車はすでにゆっくりと動き出していた。
加賀美さんは年配女性に声をかけると、電車の揺れで女性が転ばないようにそっと腰に手を回して体を支えながらこちらに戻ってきた。
そして先ほどまで自分が座っていた私の隣の席に年配女性をゆっくりと座らせる。
「ご丁寧にどうも」
年配女性が加賀美さんにぺこりと頭を下げた。
「いえいえ」
片手で吊革に掴まりながら加賀美さんが軽く微笑む。そんな彼を見て私は気持ちが温かくなった。
席を譲る動作があまりにもスムーズで、きっと普段からこういうことをさり気なくしているんだろうな。
この前もそうだった。広場で男の子たちが木の枝に引っ掛けてしまった風船を取ろうとしているのを見て、彼は真っ先に駆け寄り声をかけていた。
きっと加賀美さんは困っている人を放っておけないのだろう。
そんな彼を尊敬するのと同時に、似たような人に私も以前助けてもらったことがあると思い出す。
高校生のときに痴漢被害に合っていた私を助けてくれた大学生くらいの男の人と、先ほどの加賀美さんの姿が重なって見えた。