再会したクールな警察官僚に燃え滾る独占欲で溺愛保護されています



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四月も下旬になると日中はカーディガンなど薄手のものを羽織るだけで過ごせるようになった。

とはいえ朝晩はまだ肌寒いので寒がりの私にはトレンチコートが必須アイテムだ。

動きやすいパンツスタイルで訪問先企業を訪れたあと、会社へ戻る前にお昼をすませることにする。

午前の外回りから戻るときは必ずといっていいほど利用するお気に入りの定食屋は六十代のご夫婦が営む家庭的なお店だ。

母親がいない私は〝家庭の味〟というものを知らない。

たぶんこんな感じなんだろうなとこの定食屋の料理を食べるたびに想像していた。

昼時とあって近くのオフィス街に勤務する人たちも昼食を取りに来ている。ちょうどふたり掛けのテーブル席が空いたのでそこに案内された。

常連になりつつあるので接客を担当している奥さんとは顔見りで「いつものだよね」と、私の注文するメニューをわかってくれていた。


「はい。ミックスフライ定食です」

「はいよ。今日は特別にカキフライが付くからね」

「本当ですか。やった!」


よろこぶ私を見て笑顔を浮かべた奥さんはご主人が料理を作る厨房へと戻っていった。

ここにくると必ず注文するミックスフライ定食はアジフライ、コロッケ、ささみかつに大量のキャベツが添えられ、そこにご飯とお味噌汁と漬物がつくセットだ。

今日は特別にカキフライもつくらしい。


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