【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
帝国騎士団の立派な騎士服を纏い、ジルベルトとはまた違った印象の整った顔立ちの青年が仔猫のジルを抱くマリアに冷ややかな眼差しを向ける。
怜悧な翡翠の瞳の奥には懐疑的な光を宿し、マリアの本質を見極めようと鋭く揺らめく。
歓迎されていない……ひと目でマリアがそう感じるほどに。そんな彼の瞳から逃げるようにお辞儀をする。
「は……初めましてっ。マリアと申します」
「ジルベルト様はご多忙ゆえ、ここからは私が案内する」
青年は仔猫のジルを抱いたマリアを頭から爪先まで眺め、あからさまに眉をしかめた。その辛辣な視線に足がすくみそうになる。
——こんなに酷い格好だもの。しかめ面をされても仕方がないわ。
「猫を飼うのか……」
小さく舌打ちが聞こえ、ジルを抱えたマリアはいたたまれなさに苛まれる。