【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 マリアの小さな鞄を持って控えるのは、居酒屋を出る際に荷造りを手伝ってくれた女性だ。青年が目配せをすれば荷物を置き、深々と一礼をする。
 
「申し遅れたが、私の名はフェルナンド。ジルベルト様の従者だ。この獅子宮殿に於いてわからぬ事があれば、メイドを通じて私に尋ねなさい。何度も言うがジルベルト様はご多忙の身だ。余計な世話をかけぬよう心に留め置くように。よいな?」

「はい……フェルナンド様」

 お世話になります、と言うのも何だかおかしな気がする。マリアはただ一生懸命に頭を下げた。

「宵にもなれば、そなたはジルベルト様の自室に伺うのだ。夕食を摂るまでに、その汚れきった身体をしっかりと清めておけ」

 ——ということは。今夜から早速、ここでの『仕事』が始まるのね……?
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