【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「もう随分前から不眠が続いていてね。ひどい時は一睡も出来ず朝を迎えることもある。目を閉じても浅い眠りに苛まれ、同じような悪夢を見るのだ」
睫毛を伏せたジルベルトの脳裏に浮かぶのは——。
紅い血の海と、手を掛けた命の断末魔。ジルベルトを嘲り罵る言葉と、鼓膜を裂くような叫び声。
グラスに残った液体を飲み干し、二杯目をなみなみと注いだジルベルトは、その半分を一気に喉元に流し入れた。
「眠れないのはとてもお辛い事です。だからと言って……そんなふうに強引にお酒に頼るというのはっ、身体によくありません」
「俺の身を案じてくれるのだな」
「当たり前です。あなたは私の……た、……」
「?」
——大切なひとです。
「あ、いえ……その……っ。私とジルを、あのお店から、た、助け出して下さったので、言葉では言い尽くせないほど感謝しているのです」
「ならば遠慮をせずに言う。俺を救うと思って、当面のあいだ寝入り端にマリアの膝を借りたいのだが、かまわないか?」
「私の、膝、ですか?」
「ウェインの地下牢で……。マリアの膝の上ではよく眠れたのだ。この寝所でも眠る癖が付けば、不眠を克服できるような気がしてな」
——え! 膝を借りるって、お膝枕——?!