【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「そんな事で良いのなら……もちろん、協力させていただきますが……っ」

 不眠を治したいと訴える真剣なジルベルトに邪な下心など無いのはわかっている。ジルベルトを過剰に意識して、恥ずかしがっているのはマリアだ。

 ジルベルトの視線がマリアの膝に向けられる。

「も……もう、お休みになられますか?」 

 大きな身体がぎしりとソファの座面に沈む。数秒後には、マリアの膝はジルベルトの重量のある後頭部を支えていた。
 視線を落とせばジルベルトの秀麗な面輪に見つめられ、マリアの心臓はどくんどくんと落ち着かない。

 ——下からそんなに、見られてはっっ

 まるで無垢な子どもが珍しいものを初めて見るように、ジルベルトはマリアから視線を離さない。
 
 すっと上がる逞しい腕。筋張った手の甲がマリアの頬をかする。

「本当に見違えたな。肌も綺麗だ」
「私なんて綺麗なはずがありませんっ……! 揶揄(からか)うのは、もうよしてください」

 ふん、と鼻を鳴らしたジルベルトの親指が、マリアの頬を滑る。

「ああ、揶揄(からか)っている。だから俺の言うことは気にするな。さらっと流せ」

 くすりと笑って、ジルベルトはマリアに背を向ける。そして小さな子どもがするように膝を抱え、マリアの膝枕に甘んじながら横寝の体勢を取った。

 ——牢屋はずっと暗かったし、ジルベルトは怪我のせいで朦朧としていたもの。こんなにはっきりと意識があるのに、お膝枕だなんて……っっ。
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