【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
しばらくすると、呼吸にあわせて上下する肩の動きがゆっくりになった。
「ジルベルトさま……もぅ、眠ったのですか?」
こそ、と問いかけると。
マリアに背を向けたままのジルベルトが、
「敬称は要らぬと言わなかったか?」
「っ、でもやっぱり、目上の方を呼び捨てにするのは抵抗があって」
「呼んでいればそのうちに慣れる。あぁ、やはり《《これ》》は気持ちいいな……」
ふぅ、とジルベルトが深く呼吸をする。遠慮がちにマリアが覗き込めば、翼の睫毛はさも心地よさそうに閉じられていた。
「お……お布団の中に、入らないと。ここで眠ってしまわれては風邪を引きます」
「そうだな。マリアを寝台に運んで、共に布団に入るか」
「ですから……! 揶揄わないでくださいっ」
「ふふ。流せと言ったろう?」
——ただでさえ心臓がばくばくして壊れそうなのに。
毎夜こんな調子では……私の心臓、いつまで持つかしら!