【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
ぶるぶると背中が騒ぎだす。
眠ってしまった自分のだらしない寝顔を、あの美しいジルベルトに見られてしまったのだろうか。
それどころか寝室まで運ばれ(はばかりながら言ってしまえば横抱きにされたものと思われる)、あろうことかジルベルトのベッドで横並びに眠ったなんて———!
「はわ、わ、わ、わ」
———私は、どんなお叱りを、受ければ……っ
祖国シャルロワをたった一人きりで追われた時、マリアは十四歳の少女だった。この三年間、勿論、人に親切にしてもらった事もある。だからこそここまで来られた。
けれど「身寄りの無い子供」が生き抜く環境は厳しく、そそっかしいマリアの失敗は疎んじられ、時には折檻や、酷い罰を受けた事もあった。
思わず両手で口元を押さえた。頬がこわばり、頭の中が真っ白になって卒倒しそうになる。
使用人が《《雇い主の》》ベッドで眠ったなんて——。
慌ててベッドを這い降り、乱れた寝具をできるだけ綺麗に整える。
部屋に残してきた子猫のジルも気掛かりだが、マリアが『仕事』をしている間はラムダが面倒を見てくれているはずだ。
「とにかく、早くお部屋に戻らなきゃ」
ベッドサイドの小卓には左右それぞれに照明器具が置かれているが、マリアの側の小卓の上に、小さなメモのようなものが白く浮き出るように目に入った。
折り畳まれてもいないその紙の表面に「マリア」という文字を見つけ、おそるおそる手に取ってみる。