【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
騎士兵が立つ場所は、そこから半球の形をした天井が吹き抜けるホールのような構造になっている。
——綺麗……!
見上げれば、六角形の硝子が無数に貼られた高い天井が碧々と煌めき、美しい光の筋を大理石の白い床に落としていた。
ここを抜ければ、マリアに与えられた部屋はすぐそこだ。
「……ほら、あれが」
「どんな女かと思ったら。ただの《《痩せぎす》》じゃない」
ささやくような小声がマリアの耳朶を掠める。
顔を向ければ、向かい側の廊下で花を生けていた二人のメイドが、マリアの視線に気付いてわざとらしくこちらから目を逸らせた。
マリアの心を縮こませたのはそれだけではない。一度目を逸らせたはずの二人が、こちらに向かって歩いて来るのだ。
明らかにマリアに好意的ではない四つの眼に睨みつけられているのを感じて、今度はマリアが目を逸らせた。
——あのふたり、何だか怖い。