【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 三年前——現皇帝が不治の病に臥した事を契機に二人の兄の愚行を裁き、秘密裏に死罪を処理したのは、当時彼ら二人とは腹違いの第三皇子だったジルベルト・クローヴィスだ。

 理知的なジルベルトを突き動かしたものは、煮えたぎる胸の内より這い出た《《狂気》》であった。

 とは言え、帝国の繁栄と安寧の為だけに行動することを信念としてきたジルベルトには必要な過程だった。
 というのも、ジルベルトの兄である二人の皇子は己の利権のみを優先し、保身のために善良な万の民をも殺す愚王の素質を備えていたからだ。

 ジルベルトの想いを察したフェルナンドが二の句を継ぐ。

「ご自分を責めるのはもうおやめください。愚行の口封じのために彼女らの居場所を暴き、刺客を遣って殺害したのはあなたの兄上たちです。
 あなたは彼女らを(かくま)い、守ろうとした。彼女たちが殺害された事を直々に伝え、頭を下げた事にも遺族らは感佩(かんぱい)しているのです。
 この三年という歳月のあいだ、あなたは誠意を尽くし十分に償ってきた」

「最愛の娘や婚約者を失った者たちに対して十分などという言葉はあるまい」

 ——それにあの時、俺は兄上らを激昂の赴くまま、侮蔑を込めて殺したのだ。
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