【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
そばにおいで。
ここが宮殿内のダイニングルームなら、目上の者と近い席はまず避けられ、少なくとも正面から数席を隔てて座らされるはずだ。
「昨夜は……っ、本当に、申し訳ありませんでした」
深く頭を下げるマリアにいつもの慌てた様子は無い。落ち着きを心がけ、マリアなりに心からの謝罪の意思を示そうとしていた。
「なぜ謝る。マリアは『お茶役』、つまりは俺を眠らせる役目を果たしただろう?」
「いいえ、愚かな私は……あろうことか寝坊をして、あなたのお支度を手伝いませんでした。それに……」
——ジルベルトの寝台で眠ったことだって、謝らなければ。
ようやく顔を上げたマリアに、椅子を引いた侍従が早くしろと言わんばかりに鋭い視線を送る。
マリアとて、一国の王女の端くれだ。
直径の王子が生まれるまで王城で暮らしていた頃は、それなりの教育を受けていた。離塔に追いやられてからも、立ち居振る舞いや作法を母親自らが教え、身につけさせようとした。
「こちらで本当によろしいのですか?」
引かれた椅子はジルベルトの真隣だ。侍従がマリアにうなづけば、
「畏れながら、失礼いたします」