【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!


 マリアが席に着くと、テーブルに片肘をついたジルベルトの薄いブルーの双眸に見つめられた。昼食の席だとはいえ気を張る貴族同士ではなく、心易いマリアを相手に随分と気を許しているようだ。

「そんなにじっと見られると、幾ら小動物でも恥じらってしまいます」
「小動物?」
「私は……何の動物に似ているのですか?」
「動物。それは考えた事が無かったな。何に似ているか……」

 ジルベルトは形の良い顎に(こぶし)をあてたまま、思案を巡らせる。
 頬に影を差す翼のまつ毛。秀麗な面輪の輪郭を囲む、漆黒の礼服の高い襟。その襟元に付けられた黄金の鷲のブローチが、ジルベルトが動くたびに煌めいている。
 マリアがぼうっと見つめている間に質問の答えが出たようだ。

「捨てられた仔猫、かな」
「仔猫……ですか? ふふっ、確かに、愛らしいです」

「ン、愛らしいはいけなかったか? 褒めたつもりだが、愛らしいじゃなく美しいと言うべきだったか」

 顎に拳をあてたままジルベルトが真剣に考え込んでいるので、マリアはますます戸惑ってしまう。

「いいえ、そんな……っ。あなたが愛らしいとおっしゃったのは、私が小動物か何かに見えたからだと思ったので、何に見えたのかをお聞きしただけなのです」

 小動物か何かに見えた。
 マリアが突拍子も無い事を真顔で言うので、ジルベルトは、ぷ、と吹き出した。
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