【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「マリアが小動物に見えたから、愛らしいと言ったのではないよ」
微笑みをたたえたジルベルトの薄いブルーの瞳が、水辺のさざなみのように優しく揺らめいた。
ガゼボを囲む木々を揺らした風が頬を心地良く撫でる。
「単純にマリアを愛らしいと思ったから、そう言ったのだ」
手袋をはめた大きな手のひらが伸びてきて、長い髪を結えたマリアの後頭部を力強く包み込む。そのままぐっと引き寄せられたので、額と額がこつんとくっついた。
「マリア頭の中を、一度覗いてみたいものだな?」
後頭部にあった手のひらがすっと離れれば、額もすっと離れていく。
それはほんの数秒の出来事だった。
けれど。たった数秒でも、マリアをますます動揺させるのにじゅうぶんだ。
何をされたのかも良くわからぬままに心臓の鼓動は跳ね上がり、頭にどっと血が流れて顔中が火照るのがわかる。
「は……っ……」
両手の指先で口元を押さえながら、何度も息を吸い込んだ。
熱が上がった頬は今、林檎のように真っ赤だろう。