【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
そんなマリアをジルベルトは上機嫌で眺める。マリアの表情がころころと変わる様子を見て愉しんでいるのに違いない。
そしてマリアは、ジルベルトの次の言葉にまたもや打ちのめされてしまうのだ。
「はっ、やはり愛らしいな!」
秀麗な面輪をほころばせて涼やかに笑う。
ジルベルトの心に巣食う黒い闇が、桜色の光に呑まれていく——ジルベルト自身が気付かぬうちに。
「見ていて飽きない」
「飽きるまで見られたら、困ります……」
「寝台でマリアの寝顔を見ていたら、知らぬ間に俺も眠っていた」
ぼ!!
林檎の頬が再加熱になる。
「ですから……! 昨夜は本当に、申し訳なかったと……っ」
「責めているんじゃなくて。それにさっきから何をそんなに謝っている?」
アメジストの瞳が伏せられる、心からの自責の念を滲ませて。
「雇い主様を差し置いて眠ってしまいました。それに……あろうことか、雇い主様の寝台で眠りました」
ジルベルトは目を丸くする。
「長椅子で先に寝たのは俺だし、『お茶役』は夜伽相手の寝台で眠るものだ。それにマリアとは雇用関係ではないよ」
「ぇ……。私はあなたに雇っていただいたから、皇城にいられるのですよね?」