【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
——やれやれ。
マリア様ったら、ようやく自分の想いを認めたようですね?
謙虚さを通り越したマリアの卑屈さは、きっと彼女の育った環境や、身寄りもないまま生き抜く上での苦い経験によるものだ。
人を好きになっても、素直に『好きだ』とさえ言えないもどかしさは、マリア本人もさぞ辛かろう。
ラムダは高貴な身分を持つ家の一人娘だ。行動や発言も自由な環境で過ごしながら、蝶よ花よと大切に育てられてきたラムダにはわからない。
けれど、わからないからこそ興味が湧く。
更にはラムダの弱者に対する庇護欲のようなものをマリアは刺激する。
「獅子宮殿を、散策してみたいです」頬を赤らめたまま、肩をすくめてにっこりと微笑むマリア。
「ええ、もちろんですわ! その前にフェリクス公爵様にお許しをいただかなければなりませんが」
「フェリクス公爵様というのは、ラムダさんを私にご紹介くださった方ですよね? あなたのような素敵な人を寄越してくださったのですもの。私、お礼が言いたいです……!」
まだ見ぬフェリクス公爵に、マリアは想像力を働かせてみる。
——公爵家のご当主様は、精悍な口髭をハノ字に生やした凛々しいおじ様? それとも、小柄で優しい雰囲気のおじい様……?