【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「皇太子様の恐ろしいお噂を、耳にした事がありましたので。
畏れながらアスガルドの皇太子様は、女、子供であっても容赦なく殺す冷酷さがある。粗相などしようものなら即座に斬られると。私はこの通り粗忽者ですから……皇太子様の面前でどんな失敗をしでかすかと思うと、恐ろしくて」
「では、二人の皇子のことは?」
敢えて尋ねたのは、ジルベルトの心によぎる違和感の答えを確かなものにするためだ。
「それは……よく存じ上げません」
「君が知るのは、それだけか?」
「はい。他にも、何か……?」
すっくと見上げるマリアの瞳に嘘や偽りは感じられない。
——やはりマリアは知らぬのだ。
二人の兄を殺し、皇太子となった第三皇子の事を。
マリアとて心穏やかではない。
ジルベルトが皇太子本人ではないにせよ、帝国が王女リュシエンヌを探していることに変わりはない。すぐ隣の本宮には皇太子セルヴィウスだっているのだ。