【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「それなら、どうして……?」
「添い寝には違いないだろう?」
「でも近すぎます」
「何か問題が?」
「もっ、問題と言うか……私の心臓が持ちません」
「心臓? ……はっ。それは慣れてもらわねば困るな」
「慣れるまでは、もう少し離れてください……!」
「離れてしまっては余計慣れぬだろう?」

「ならば」と、力強い左腕がマリアの華奢な腰をぐ、と抱き寄せる。
 あっと声をあげる間も与えられないまま、マリアの額はジルベルトの肩の窪みにおさまっていた。

「そのうちに慣れるだろう。こうしてふれていれば、俺も安心して眠れる……」

 ——恐れている。君が皇太子を嫌悪すると知ったあの時から。
 君は夢の中で会った天使に良く似ている。傷を癒し、俺を救う天使だ。
 ようやく探しあてた《天使》を、失うのが怖いのだ。

 ジルベルトは目を閉じ、ストロベリーブロンドの柔らかな髪にくちづけて、形の良い鼻を埋めた。
 頭のてっぺんにとはいえ、マリアにもその感覚は伝わる。

「ジルベルト……っ?!」
「身勝手な男の我儘に付き合わせてしまって、すまない」

 甘い麝香が薫るジルベルトの素肌。
 マリアの薄い夜着越しに互いの熱が伝わる。どうにか腕の外に逃れようと思うが、叶わぬらしい。それに逞しい片腕は、腕枕でマリアの頭部を抱えているのだ。

 ———どう考えても抱きしめられているのですが……!
 私が無知なだけで、これも『添い寝』と呼ぶのでしょうか?
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