【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 マリアの髪に鼻先を埋めたまま、ジルベルトは穏やかに目を閉じる。微かに薫る薔薇の香に恍惚となり、思わずふ、と熱い息を吐いた。

 ——いつもの妄想が襲ってこない。やはり安心する。

 それだけではない、マリアを抱き寄せた時。
 妄想の代わりにジルベルトを襲ったのは、身体中が痺れるような感覚。経験したことのない、背中を撫で上げられるような甘い痺れが今も続いている。
 
 ——これは一体、何なのだ?

「ぁのう……。眠れそうでしょうか……?」
「ン……眠れそうだよ。マリアのおかげだ」

 穏やかで甘く、とろけそうに優しい声が頭の上から落ちてくる。

 ——胸のどきどきがジルベルトに伝わってしまわないかしら。
 私の心音が(うるさ)くて、眠れないのではないかしら。

 せめて自分の顔が見えなくて良かったと、マリアは思う。
 どうにか落ち着こうと頑張ってはいるけれど、身体はとても正直で。頭の先から足の先まで、特にマリアの顔は、林檎みたいに真っ赤になっていそうだから——。

 

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