【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 ふつふつと煮える胸の内側がかあっと熱くなる。
 皇太子は下女を夜伽に迎え、毎夜のごとく寵愛を……優しい腕で抱き、愛情を、美しい微笑みを、その女に与えているのだろうか。

 リズロッテがどれほど乞い願っても、夢とまぼろしの中で想像するしかなかった皇太子の秀麗な笑顔を……卑しい下女があの凛々しい腕のなかで眺め、甘く切ない愛の言葉を注がれていると言うのか。

「わたくしたちは、その下女以下だということ……?!」

 熱く煮えたぎる胸の内を抑えることができない。
 突然に火の粉を散らしはじめたリズロッテの気迫に気付き、エミリオとフィフィーは驚いて怯み、こくりと息を呑む。

 ——皇太子殿下に取り入った卑しい女。
 その恐ろしく(したた)かな下女とやらが、いったいどんな(かんばせ)をしているのか。
 一度見てみたいものね……!


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