【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
——私の鶏がらみたいに貧相な身体つきも、ジルベルトに伝わっているかも知れないわね?
いや、当然に伝わっているだろう。
——だとしたら、恥ずかしい……!
一般的に男性は肉付きのいい豊満な女性を好むと、ラムダさんは言っていた。ジルベルトだって、きっと……。
視線を下に向けて、胸の膨らみの辺りをまじまじと眺めてみる。コルセットが持ち上げてくれているおかげで、どうにか形を保っている程度だ。
「はぁ…………」
ラムダの言いつけ通りたくさん食べさせてもらっているけれど、急激に身体つきが変わるはずもなく。
そういう心配ごとも相まって、マリアの毎夜の眠りは穏やかではない。
——《《鶏がら》》が恥ずかしいだなんて、きっと私の考え過ぎよ? 添い寝を所望されるのは悪夢を見ないようにするため。私の身体つきがどんなだって、ジルベルトには関係ないはずだもの……!
恥ずかしさをどうにか胸の奥に押しやろうと、ティーカップを口元に運んだ。グリーンのお茶に浮かんだミントの葉の爽やな香りが鼻腔に溶けていく。
仔猫が膝の上で気持ちよさそうに丸くなっている。そよ吹く夕風と愛らしい小鳥の囀りにいざなわれ、
「……ぁふぁ」
小さなあくびが出てしまい、指先で唇を抑えた。
寝不足が続いているので、夕刻にもなると眠くなってしまうのだ。
「——全く、悠長なものだ。身を慎みなさい」
声がした方を慌てて見遣れば、立派な騎士服に身を包んだ黒髪の美丈夫がこちらに向かってくるのが見える。