【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!


「単刀直入に聞く。マリアとやら。あなたはジルベルト様のご寵愛を受けている。その自覚はあるな?」
「……ご寵、愛……?」

 当然、そんな自覚などはない。
 そもそも何がどうなれば『寵愛』なのかも、マリアにはよくわからない。

「いいえ、寵愛だなんて、とんでもない事です……!」

 マリアはふるふる、かぶりを振る。

 ——毎夜、殿下の寵愛を受けているのだろう?! 下女だった分際で帝国の皇太子を唆《そそのか》しておきながら、否定をするのか。虫も殺さぬような顔をして、強《したた》かな娘だ。

 フェルナンドがそう思うのも仕方がなかった。これまでジルベルトに近づこうとする女は、みんな(したた)かだったから。
 事情を知らぬマリアは返答に困ってしまう。

 ——私はただ、添い寝をしているだけだもの。

「憚りながら、フェルナンド子爵様。『寵愛』とは……大切にして愛するということ。ジルベルト様は私に優しくしてくださいますが、その理由は愛情などではありません」

「ほう。なぜ、そう言い切れる?」

「ジルベルト様は……ただ正しく眠るために、私をそばに置いてくださっているだけだからでございます。私がそばにいると、良く眠れると……。ただ、それだけでございます」

 アメジストの瞳に影を差す長いまつ毛が静かに伏せられる。これはマリアの本音だ。
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