【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「調査の結果……って、言われてもなぁ。マリアちゃんは可愛いし、素直だし? 殿下の命を狙うどっかの国の間諜(スパイ)だとかそういうのじゃなさそうだし。僕は特に問題無いって思いますけど?」

「マリアの立ち居振る舞いを見ただろう。某国の貴族か上級国民の没落令嬢ではないかと俺は踏んでいる」

「殿下の想像通りだとして。没落令嬢なんて帝国中に何千、何百といますよ? 帝国の属国は十本の指じゃ足りないし、属国外まで言えばキリがない。マリアちゃんが没落令嬢だとしても、素性まで調べ上げるのは不可能に近いでしょうね。ってか! 僕らに集合をかけた張本人がここにいないのはどう言うことです?! 彼は見かけによらずいい加減だからなー。時間にもルーズだし!」

 このタイミングでフェルナンド子爵が入室する。開け放たれていた執務室の重厚な扉が侍従らによって閉められた。

「フェリクス公。誰がいい加減と? 聞き捨てなりませんね、ろくに調査の成果も上げられずにいるあなたから、その台詞(せりふ)とは」
「いやいや、僕らは結構頑張ったんだよ?! けど出てきたのはそれだけ。そう、フェルナンド。君が手にしている《《それ》》だけさ!」

 机上の書類から目を離したジルベルトがちらと見遣る。
 フェルナンドの拳には、ある者の身辺調査結果にしてはやたら薄っぺらい紙の束が握られていた。
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