【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 執務机の上に広げられた数枚のそれに、ジルベルトがざっと目を通す。

「ウェインで働く前は隣国で農家の手伝いをしていたのだな。それ以前の情報は無しか……。だが生きる場所を転々とするのは、身寄りのない者にはよくある事。フェルナンド、これで気が済んだろう? マリアはウェインで下働きをしていただけの娘だ」

「皇太子殿下。マリア様について、わたくしの方からも報告がございます」

 ジルベルトを真剣に見遣る、怜悧な濃紫色の瞳。
 マリアの専属メイド、ラムダだ。

「このひと月、わたくしはマリア様をすぐそばで見て参りました。それで気が付いたのですが……どう考えても、腑に落ちない点がございます」

 ジルベルトは執務机の上にペンを置き、ラムダを注視する。
「腑に落ちない点とは? その話。詳しく聞かせてもらおうか」

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