【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
まさかの無自覚同士
「腑に落ちない事情をお話しする前に。マリア様に関して、このひと月でわたくしが感じたことを申し上げます。
マリア様は貴族、もしくはそれに準じる家系の生まれではないかと。この点に関して、わたくしも殿下と同じ意見でございます。
先ほど、マレという画家の画集をマリア様にお持ちしたのです。
マレは著名な画家ではありませんが、マリア様はマレをご存じでした。そればかりか、絵に添えられた注釈を目で追って読んでいらっしゃるご様子でした。
いつどのようにして得たものかは分かりかねますが、マリア様の知識量には目を見張るものがあります。識学の経験が無いと仰っていたにも関わらず文字が読め、豊富な知識を得ていらしゃる。平民、下民の出だとはとても思えません」
フェリクスが真面目な顔をする。軽率そうに見えて、命じられれば迅速に行動する男だ。
「ウェイン近郊の没落貴族あたりから調べてみますか?」
「いや、良い。これ以上は尽力の無駄になるだけだ」
フェルナンドは既にマリアを眼中に置いていないようだった。
——いづれにせよ卑しい身分、殿下の側妃にもなれぬ娘だ。殿下に危害を及ぼす者でないとわかればそれで良い。