【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!


 フェルナンドがホッとしたのも束の間。機嫌を良くしたジルベルトはいとも簡単にフェルナンドの安堵を覆すような事を言う。

「マリアが貴族の没落令嬢ならば、親の爵位を継承する権利が留保されているかも知れない。父親は他界したと言っていたが、詳しい事情をマリア自身にも尋ねてみよう」

 ——殿下の熱には困ったものだ。
 王女リュシエンヌの捜索に一人で危険な場所にまで赴かれる事が減ったのは良いが、近頃は手を抜かれているように見える。
 皇位継承権を持つ最後の皇族が、いつまでもあの下女に現を抜かしている場合ではないのだ……!

 壁にもたれ、胸の前に組んだ両腕を組み直し、フェルナンドは黒髪の奥の翡翠の瞳を所在なく泳がせるのだった。

「わたくしが腑に落ちない事についてでございますが……」

 三人の鋭い()が一斉にラムダを注視する。

「その前に、皇太子殿下。まずはお人払いを」
「え? ちょ! なんで? 《《僕ら》》も聞きたいんだけど!」

 人払いなどと言い出したラムダを、フェルナンドも納得がいかんと言わんばかりにぎろりと見遣る。

「皇太子殿下と二人だけでお話がしたいのです」
「良いだろう。フェリクス、フェルナンド。……頼む」

 フェリクスは渋々、「わかりましたよ……」
 ラムダへの鋭い視線はそのままに、フェルナンドもフェリクスに続いて執務室の扉へと向かう。

 すれ違いざまに、ラムダがフェルナンドにそっと囁く——
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