【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「子爵が疑いを抱いた、マリア様がリュシエンヌ王女だという証拠。残念ながら見つかりませんでしたわね」

 ——人知れず、二人は互いにちらと視線を交わした。


「畏れながら」

 余人の退室を見届けると。
 ラムダはジルベルトに向き治り、覚悟を決めたように姿勢を正す。

「はっきりと申し上げます。皇太子殿下とマリア様を見ていて、わたくしはどうしても……腑に落ちないのです」

「ラムダ。君は何が言いたい?」

 人払いをせねば伝えられぬ事なのか。
 怪訝な表情を見せた皇太子はふうと息を吐き、執務机に頬杖をつく。

「ため息を()きたいのは此方(こちら)のほうでございます、ジルベルト殿下。ひと月ものあいだ毎夜寝台を共にされていると言うのに。殿下のご愛情が、マリア様にちっとも伝わっておりません」

「ン……?」
 てっきりマリアの秘密にでも触れるのかと思っていたジルベルトは拍子抜けしてしまう。

「はっ。それは……予想外の報告だな! 驚いたよ、なぜそう思うんだ?」
「マリア様がいまだに無自覚すぎるからです」

「無自覚、とは。何に対して?」
「ジルベルト様からご寵愛を受けていらしゃる事です」

 ラムダから視線を逸らせて、ジルベルトが何のことだと言いたげに首を傾げている。
 顎に手をかけて思案気な顔をしながら、

「俺の、寵愛……」

 ——まさか。
 ジルベルト様まで無自覚っ?!
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