【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「はい。皇太子殿下は、マリア様を寵愛なさっていますよね?」
「ラムダ、君がそう感じる理由が知りたい。マリアが君に何か話したのか?」

 この二人ときたら……!
 いったいどこまで世話が焼けるのだろうと呆れ果て、ラムダは嘆息するしかない。

「皇太子殿下にお尋ねします。恋する心は甘くて柔らかい。その人のことを思うだけで胸が高鳴り、顔がほころびます。殿下はマリア様を見ると頬が緩みませんか? 毎夜会いたいと思うから、お茶役を続けさせるのでしょう?」

「……そうだな、君の言う通りだ。そう思うよ」

「マリア様を可愛いと思うでしょう?」
「うむ、愛らしいと思う」

「その可愛いは、動物が可愛いとか、子供が可愛いとか、そういうのと同じ種類ですか?」

 国務書類などそっちのけで真剣に悩む様子を見せたあと、ジルベルトはようやく口を開いた。

「……いや、違うな」
「はい。それは『愛情』です! 弱い者への『慈愛』ではなく、男女の『愛』、殿下の恋心です!」

「恋……なんだろうか。よくわからんのだが、マリアにふれると妙な気持ちになるんだ。なんと言うか、ぞわりと身体が痺れるような……。何かの病かもしれんと宮廷医師長に打ち明けたが、医師長はヘラヘラと笑って薬は必要ないと」

 ——だからそれは恋の病ですって!!

 ラムダはほとほと驚かされる。数多(あまた)の女性に恋心を抱かせておきながら、この男はいったい何を言うのか。
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