【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「お言葉ですが、ジルベルト殿下。殿下がそんなだからマリア様にも伝わらないのです。
 恋は花のように咲き、心の中でじんわりと広がっていく暖かい香りがあります。甘い香りに心が踊り、相手の喜ぶ顔が見たい、無条件にただ喜ばせたいと思うでしょう。
 ちょうど今月の三日、星祭りの日がお誕生日なのです……マリア様の!
 殿下の愛情をお示しになる絶好のチャンスです。マリア様を喜ばせたいと思うなら、大切にしたいと思うなら、この機会に何か特別な贈り物をしてあげてください!」

「特別な贈り物? ……例えば?」
「そのくらいご自分で考えてください」

「愛情、を……示せと言われても。俺は、何をどうすれば……」

 皇太子の二人の兄殺しの事を、ラムダも知っている。
 若くして皇位を継ぐという責任感がそうさせているのだろうが、常に威圧と威厳を漂わせる皇太子が今はどこかそわそわと落ち着かない。

 他を寄せ付けぬように睥睨する瞳が甘く揺らぐのを見て、ラムダは頬を緩ませた。

「殿下の《《初恋》》なのでしょう?」

 ジルベルトは拳を口元にあてて、目をぱちくりさせる。

「は……初……?!」

「まずは言葉と態度でしっかりとお示しになるべきですわ。好きだよーとか、ちゃんと伝えましたか? 想っているだけでは気持ちは伝わりません。マリア様にも、ちゃんと口に出して言わなければ伝わらないのです!」


 ——ただでさえマリア様は、超絶鈍感なのですから。


 もはやジルベルトは、目を丸くしたまま両手のひらで口元を覆っている。頬が赤く見えるのはラムダの気のせいではないらしい。

 ——殿下ったら、照れちゃって可愛い!
 やばい、冷酷イケメン皇太子が照れてるの、キュンとくるーっ!
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