【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
心の内側とは裏腹に、ラムダは至って真顔で言う。
「今宵はちゃんと伝えてあげてくださいね。明日の朝マリア様に確認いたしますから、どうぞご覚悟のほど! あら、少々お喋りが過ぎましたわ。ではこれにて」
「…………ああ。いや、ラムダ、ちょっと待ってくれ。マリアは……どんなものを好むんだ? 前に一度探ろうとしたのだが」
一番大切なものを持ってくるようにと。
それを見れば、マリアの好むものがわかるのではと——。
「結局、何もわからぬままだ」
「さぁ。好きな人からの贈り物なら、マリア様は何でも喜ばれるのでは?」
「す、好きな……人、とは……?!」
ラムダの一言一句に、《《無自覚な》》ジルベルトはいちいち驚いている。
「お誕生日ですから、わたくしならちょっとした特別感が欲しいですけれど?」
——まぁしばらく照れ続けてください。
照れている殿下はとても可愛いので。
「では、わたくしはこれで」
扉を開ける侍従を横目に振り返ると。
執務椅子にきちんと座ったまま固まった皇太子が、虚空をじっと睨みつけていた。
——あぁっ……今日の殿下のこと、マリア様に告げ口したーい!
(しませんけど)。