【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
突き放されたのが、ジルベルトの気まぐれではなく——。
どんな些細な事でも、他の理由があった方がまだ良かった。ちゃんと《《嫌われて》》しまいたかった。
マリアの粗相のせいで嫌われたのなら、粗忽者の自分を責めるだけで済んだのに……。
もやもやした気持ちをどこにぶつければ良いのかわからぬまま、マリアの心は見えない力一杯に心臓をぎゅっと掴まるれるように苦しいのだった。
「ラムダさんに、お伝えしたいことがあります」
寝台に腰掛けたまま、仔猫を床に下ろしたマリアは真剣な眼差しをラムダに向ける。いつでも花のようにふわりと柔らかなアメジストの瞳。だが今は、一縷の緩みさえも見当たらない。
ラムダは怯んだ——何だかとても嫌な予感がしたのだ。