【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「とにかくマリア様っ。ジルベルト様に、きちんと事情をお尋ねしましょう?! きっと何か理由があるはずです…… !」

「ラムダさん、お気遣い有難うございます。でも、毎日何もしないでこのままずっと皇城に置いていただく事はできません。ですから……早々に、皇城(ここ)を出て行こうと思います」

 ラムダの嫌な予感は的中した。
 だが「はいそうですか」と見送るわけにはいかない。

「マリア様、早まらないでください。このままジルベルト様の側を離れれば後できっと後悔することになります……! このわたくしに免じて、今しばらく時間をくださいませんか?」

「ラムダさんのお気持ちは嬉しいのですが、こうやって曖昧な気持ちを抱えたまま日々を過ごすのは辛いですし、気も引けてしまいます。
 私は使用人として働くことを許されていませんから、下働きをさせていただく事もできません。ここにいる意味が、もう何もないのです」

 ジルベルトの庇護を失ったとすれば、マリアとて心安らかではない。すぐ隣の本宮にはマリアを探しているはずの皇太子だっているのだ。
 他に行くあてなど無いけれど、一刻も早く皇城(ここ)を出た方が身のためだろう。
 
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