【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 長く繊細な指先が、幾度となくラムダの頬を打った。
 すると、

「……んんっ、嫌だわ……わたくしったら、昼寝でもしていたのかしら」

 たっぷりと長い睫毛の奥の、濃紫の瞳がうっすらと開いた。
 ラムダが見上げた先に、自分を抱えて見下ろす『護衛の男』の秀麗な面輪を認めたとき。

「ジルベルト様……!?」

 驚きと焦りとで慌てて半身を起こせば、「痛っ」小さな叫びとともに右足を見やり、表情(かお)を歪ませる。ラムダは無理にでも立ちあがろうとするが、男の腕がそれを制止した。

「足首を痛めたようだが、かすり傷の他に怪我は無いな?」
「も……、申し訳ございません。とんだ不敬を…… !」 
「俺の事は気にするな。良くやったな! 子供は助かった。君は人助けをしたんだ」

 鷹揚に言葉をかける『護衛の男』——ジルベルトは。
 片腕を上げて外套(ローブ)のフードを下ろす。

 真昼の太陽の下で光を孕んだ薄灰色の髪が、爽やかな風にさらりと靡いた。

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