【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
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もう何度目だろう。
隣に歩くマリアを、ジルベルトが見遣るのは。
——こういう時はどうすればいい? いったい、どんな言葉をかければ良いのだ……。
ラムダを乗せた馬車を見送ってからも、マリアはずっと黙って俯いたままだった。そんなマリアと並んで歩きながら、ジルベルトは戸惑い続ける。
午後を迎えた帝都の『星祭り』は、より一層の賑わいを見せていた。人の出が増えて視界も悪くなり、少し目を離せば二人ははぐれてしまいそうだ。
人通りが増えた中央街道の、路肩の向かい側から歩いてきた男にマリアの肩がぶつかった。
か細い身体がぐい、と後ろに弾かれてバランスを崩しそうになるのを、ジルベルトがマリアの手首を掴んで引き寄せる。
「マリア……!」
その時初めてマリアが顔をあげ、目が合った。
虚を突かれたジルベルトは目を見張る——眉根を寄せたマリアの、澄んだアメジストの瞳が今にも泣き出しそうな憂いの色を滲ませていたから。
その色があまりに深く、悲しげに見えて。驚きと衝撃に、マリアの腕を掴んだまま、ジルベルトは立ち尽くしてしまう。
流れ行く人波のなかで、ふたりの時間だけが止まってしまったような静けさだった。
「……座って少し話そう」
ジルベルトに手首を引かれるまま、マリアは目の前にある背高い大きな背中について行く。
掴まれた手首に伝わる熱はとてもあたたかい。
マリアは、自分の手首を掴む筋張った手を、ただじっと見つめながら歩いた。