【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「あの夜のことではないのです。あなたは、悪くありません。悪いのは、私なのです」
ジルベルトから視線を逸らせ、マリアは居ずまいを正す。
「ラムダさんの怪我がひどくなかった事、とても嬉しかったのです。嬉しくて、ラムダさんにも言葉をかけたかった。ちゃんと嬉しいって、伝えたかった。それなのに私は……。あなたがラムダさんを抱える姿を見て、女としてとても厭な感情を抱いてしまったのです」
「厭な感情……?」
「そんな自分が嫌で、情けなくて。言葉が、出なくなって……。せっかく、あなたが私から顔を逸らさずに、いつもと変わらない態度を見せてくださったのに」
マリアの瞳にみるみる涙が溢れ、頬を伝ってこぼれ落ちた。
「あなたがここに来てくださった事も、とても嬉しかったのに……。肩を抱いてくださった事も、嬉しかったのに。私は、ひどく卑しい……。大好きな友人に、あんな気持ちを抱くなんて……っ」
ジルベルトは目を見張る。
マリアはいったい、何をそれほどまでに悔やむのか。
「マリア、君が泣く理由が知りたい。何故そんなに自分を責める……? 厭な感情とは、何だ?」