【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
ジルベルトの親指がマリアの頬を滑り、光る涙の粒を拭う。
マリアはびくんと、ふれられた頬に緊張を走らせた。
「あろうことか、私は……嫉妬したのです。あなたと話すラムダさんが、羨ましいと……っ」
嫉妬。
それは後宮においても頻繁に聞かれるもので、ジルベルトが嫌う言葉だ。
なのにマリアが発すれば、むしろそれを愛おしいと感じてしまう。
——マリアと出会うまでは知らなかった。
女嫌いだと自分でも認めていたこの俺の中に、『愛おしい』なんていう感情があったなんて。
その愛おしいものの喜ぶ顔が見たいと、これほど強く望むなんて。
ラムダを抱える自分を見て、マリアはラムダに嫉妬したと言っているのだ。
「あなたが、今、想像なさった通りでございます。第三皇子殿下……私のような者がこんな想いを抱く事など、許されないとわかっています。それでも、私はあなたが……好きなのです。大好きなのです……。許されない感情を抱えたままでいるくらいなら、遠ざけてもらえて良かった。私は……皇城を出て行こうと思います」
刹那、ジルベルトは背筋が甘く痺れるような感覚を覚えた。
顔面がかあっと熱くなる。考えるよりも早く身体が動いて、目の前の愛おしいものを腕の中に閉じ込めていた。
驚いたマリアが身体をこわばらせたが、ジルベルトは構わずに抱きしめる腕の力をぐ、と強めた。