【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

「羨ましいと思ったのなら、これからは幾らでも抱きしめてやる。他の女への嫉妬など、微塵も感じさせはしない……約束する。だからもう、そんなふうに泣かないでくれ」

 ジルベルトは両腕の力を緩め、マリアの身体を解放すると。
 まだ涙を滲ませたマリアの瞳を食い入るように見つめた。

「俺の顔を見て欲しい。マリアを見ていると、こんなふうに火照ってしまう。あの夜もそうだった……醜態を、晒したくなかった。ただそれだけの理由で、遠ざけた。マリアが傷ついている事など考えもしなかったのだ。こんな気持ちになるのは初めてなんだ……だからどうしたものかと、見知らぬ感情をどう処理して良いのか、わからぬのだ。この愚かな男の振る舞いを、どうか許してくれないか?」

 甘美な夢でも見ているのではなかろうか。
 マリアを見つめる碧色の瞳が、見たことのないほど心許なく揺れている。

 ——ジル、ベルト……?

 熱のこもった言葉の数々が、頭の中をいっぱいにする。
 嫉妬心など、朝霧が陽の光の中に溶けるように消えていた。
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