【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「嬉しくて、顔が緩んでしまった。……こんな顔は、もう見せたくない」
頭の上から降ってくる、ひどく心許ない声。
抱きしめられる前に見つめ合った時、ジルベルトは秀麗な面輪を紅く火照らせていた。
今もまた、あの時のように紅くなっているのだろうか。
いつでも堂々としていて自信と威厳に満ちたジルベルトでも、『照れる』ということがあるのだ。
そんなふうに思うと、胸がきゅ、と苦しくなる。
だがそれは、とても幸せな苦しさで——。
ジルベルトの大きな胸の中で、マリアはそっと微笑んだ。
「私も、顔が赤くなって、頬も緩んでいます。私たち……ふたりそろって赤くなって、照れ合って。なんだか可笑しいですね?」
思わずくすっと笑えば、
「こら、笑うな。君のせいだろう」
木々たちが煌めく木漏れ日を落としている。
マリアの髪に鼻を埋めたジルベルトは、「ふ……」と甘い吐息を漏らした。