【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
もちろん、アルフォンス大公夫人にも噂の真偽を問い正した。すると、あの遺漏のない公爵夫人でさえも打つ手立てがなく、その問題には心を痛めていらっしゃると言うではないか。
「冗談じゃないわ……!」
少々乱暴に置いたティーカップが、ガチャリと音を立てる。
後宮入りを果たした直後の二年前であれば、こんなに憤りを感じなかったかもしれない。
皇族の帝王学の一環として『お茶役』の存在があり、そして皇位を継ぐ者の正妃が懐妊しなかった場合も、正式に選ばれた『お茶役』であれば世継ぎをもうけるための側室となりうることは皆が知っている。
しかし——相手は下女だ。
側室にも、妾にもなれぬ下賎な者だ。
そんな女に皇太子を取られていたら、リズロッテに残された僅かな時間は志を遂げぬまま、無惨に散り去ってしまうだろう。
「いったい、どうすれば……っ」
リズロッテには、もう時間がない。
整った眉根を寄せて、ぎゅ、と目を閉じたとき。
「リズロッテさまぁ———っ!!」
後宮の外廊下から飛び出す勢いで、友人のエミリオ公爵令嬢とフィフィー侯爵令嬢だ。
「大変なのですっっ」
息を切らした二人はリズロッテの隣に揃って腰を下ろす。