【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「これにしますっ」
「そんな物が欲しいなら、ちゃんとした店で……」
「いいえ、あなたが三本の矢を命中させた《《ご褒美》》ですから。これにします、これがいいです!」
ごちゃごちゃと色々なものが入った籠の中から、マリアは麻糸で編まれた小さな猫の編みぐるみを取り上げた。
「この猫、ジルに少し似ていませんか?」
両手のひらを広げてそれを載せると、ジルベルトの胸の前に持っていく。
「確かに色は似ているが。ジルはもっと、こう……華奢じゃないか?」
マリアの手のひらにちょこんと乗ったその猫は、ずんぐりしていて不恰好だ。粗悪な作りで、ところどころ麻糸が飛び出ている。
「良いのです! この太っちょな感じが愛らしいのですから」
不恰好で小さな猫の編みぐるみを大事そうに握りしめるマリアを見て、ジルベルトは微笑んでしまう。
——笑っていてくれと頼んだのは俺なのに。俺のほうがよほど微笑《わら》っているな。