【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 爽やかな夜風が火照った頬を撫でる。
 マリアの言葉にジルベルトは瞠目するが、何かに納得したように一度静かに目を閉じた。

 そして再び瞼を開ければ、星々が輝く青紫色の空を仰いだ。

「マリアは、この不可思議な一夜にまつわる神話を知っている?」

「はい。私がまだ幼かった頃に絵本で見たお話と、天体と神話について書かれた書物を読んだことがあります。
 交わるはずの無かった二人の神々に、恋心と愛の神フルラが悪戯(いたずら)を仕掛けた。曖昧となった昼と夜の境で出逢い、恋に落ちた夕星の神ラウエルと暁の女神ガイアが、一年にたった一夜だけその逢瀬を許される。それがこの不思議な夜、なのだと」

「こんなジンクスがある。夕星『ラウエル』の下で誓いを立てた者たちは、暁の女神『ガイア』の加護を受け、生涯幸福に寄り添うことができると。
 夕星ラウエルのエメラルドのような輝きは、数多の星々の中でも群を抜いている。だが残念ながら、今夜はその姿を見せてくれないようだ」

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