【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
暁と夕星の逢瀬
細く繊細な金の鎖に繋がれたその鍵は。
黄金色に艶めく頭の部分に四つ葉が形取られていて、頭の部分の中央に据えられた緋色のガーネットの周りには、虹を映し取るように煌めくダイヤがあしらわれている。
「いつかこの鍵が必要になる時が来るだろう。いや……そうなればいいと思っている。今は何も聞かずに受け取って欲しい。そして大切に持っていて……《《その日》》が来るまで」
金色に光る鍵を箱の中からそっと取り出して、光にかざした。
薄暗い星あかりの下であっても、少し動かすたびにきらきらと輝く。
謎めいたジルベルトの言葉の意味も——生きてさえいれば——いつかわかる日が来るのだろうか——。
「まるで謎解きのようですね。でも……凄く綺麗……。とても嬉しいです。あなたが仰る《《その日》》が来るまで、大切に持っています」
どこか遠くから聞こえる鐘の音が、午後六時の時報を打ち始めた。
不意にジルベルトの腕が腰に回されたので、驚いたマリアが顔を上げる。
「ほら、点灯するよ」
眼下に広がる『世界』は、まだ薄暗い海のよう。
その海の真ん中に、突然にまばゆい光が灯った。
そのオレンジ色の光を中心に、小さな新しい光が一つひとつ灯されていく。
白、青、紫……様々な色を放つそれは次々と広がって、薄暗い海を鮮やかに彩りはじめた。