【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「あなたには、まだ《《知るべき事》》がある。わたくしの口からはとても言えないような辛い事実を、受け止めなければならない日が必ず来る。だから……時にはやさしさを捨てて、もっと、(したた)かな貴女になって……!」

「ラムダ……。あなたは……皇城(ここ)を出て行くのね」

 悲しみを乗せたマリアの、絞り出すような声。
 今度はマリアがラムダを抱きしめた。それに応えるラムダの両腕が、マリアの腰元に回される。

「短い間だったけれど、本当にお世話になったわ。ラムダがいなければ、私は今頃……皇城を去っていた。何も知らぬまま、大切な人をきっと傷つけていた。お礼を言っても言い切れないくらい、感謝しています……」

「近いうちにまた会いましょう、マリア。わたくしは、これまでとは違った自分になる。あなたに恥じないような自分にね。だからマリアも……」

「私もいただいた言葉を糧にします。強い自分になれるように。次に会った時、ラムダに恥じないような自分に……!」

 強く抱きしめ合い、再会を誓い合うふたりの背後には、抗うことのできない権力の波が寄せ始めていた。

『我が愛娘ミラルダよ——よく聞くのだ。今朝、皇城より便りが届いた』
 
 ラムダ——《《ミラルダ》》は、案じるのだった。
 心優しいマリアが、その荒波の中に呑まれてしまうのではないかと。

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