【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!



「今頃、アルフォンス大公が殿下に話をつけている頃合いだろう。君の《《謀略》》は滞りなく進んでいるようだな、フェルナンド」

 皇太子の執務室に続く獅子宮殿の廊下を、ふたりの青年が足早に歩いている。
 精悍な面輪に苛立ちを滲ませているのは皇太子の従者フェルナンド子爵。その隣にはフェリクス公爵だ。

「謀略? それは人聞き悪いなフェリクス。私はただ、あの愚か者を正しい道に引き戻そうとしているだけだ」

「よく言うよ。殿下とガルヴァリエ公爵令嬢との婚約の話……あれを蒸し返したのは君だろう? シャルロワの一件があってから立ち消えていたものを」

「リュシエンヌ王女の捜索に進展が無いのは一体誰の所為(せい)だろうな?! 次の一手を打つのは当然だ。それに王女はすでに死んでいるという噂が立つのも知ってるだろう……! 令嬢の才覚はさることながら、ガルヴァリエ公爵家は帝国の後ろ盾として他に追随を許さぬ大貴族だ。帝国に多大な利益をもたらすものとして、申し分ないからな」

「まーまー随分と偉そうな物言いですこと。僕が君のその態度を不敬に問わぬのを感謝してもらいたいね」

「今はあなたの友人として話している。不敬に問いたければ問えばいいさ」
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