【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
執務室の前に立ち、勢いよく扉を開ける。
執務室を出ようとしていたアルフォンス大公と鉢合わせしそうになり、フェルナンドは数歩下がって頭を下げた。
「これは……失礼致しました、アルフォンス大公閣下」
金の勲章を胸元にあしらった立派な礼服に身を包んだ大公は、白髪から覗く凛々しい眉根を寄せ、豊かな口髭を歪ませた。
「皇太子殿下の執務室だ。入る時はノックくらいしなさい」
そのまま退室していくアルフォンス大公を横目に、フェリクスが「叱られてやんの!」と言わんばかりにフェルナンドに上目を使ってほくそ笑む。
窓際の執務机に座り、ジルベルトは黙々と政務書類に王印を押し続けていた。
時々、すぐ隣に立つ政務官とのやりとりをしている。
「サヴィーニ商会の陳述は却下しろ」
「あれにはルバン伯爵が絡んでいます。根回ししないと難しいかと」
「いや、却下しろ。ロレーヌ川の橋梁工事が最優先だ」
執務官が次に差し出した書類を受け取ると、
「……これは何だ?」
「獅子宮殿内におけるメイドの特異動願いが出ています」
「王印が要るのか?」
「獅子宮殿は殿下の居城でございます。家政事務官の印影とともに必要です」
「あ! それ、僕が特級扱いで出したやつ! 誰かさんがラムダを帰しちゃったからねぇ……」
フェリクスが口を挟み、隣に立つ男をぎろりと睨んだ。
執務室を出ようとしていたアルフォンス大公と鉢合わせしそうになり、フェルナンドは数歩下がって頭を下げた。
「これは……失礼致しました、アルフォンス大公閣下」
金の勲章を胸元にあしらった立派な礼服に身を包んだ大公は、白髪から覗く凛々しい眉根を寄せ、豊かな口髭を歪ませた。
「皇太子殿下の執務室だ。入る時はノックくらいしなさい」
そのまま退室していくアルフォンス大公を横目に、フェリクスが「叱られてやんの!」と言わんばかりにフェルナンドに上目を使ってほくそ笑む。
窓際の執務机に座り、ジルベルトは黙々と政務書類に王印を押し続けていた。
時々、すぐ隣に立つ政務官とのやりとりをしている。
「サヴィーニ商会の陳述は却下しろ」
「あれにはルバン伯爵が絡んでいます。根回ししないと難しいかと」
「いや、却下しろ。ロレーヌ川の橋梁工事が最優先だ」
執務官が次に差し出した書類を受け取ると、
「……これは何だ?」
「獅子宮殿内におけるメイドの特異動願いが出ています」
「王印が要るのか?」
「獅子宮殿は殿下の居城でございます。家政事務官の印影とともに必要です」
「あ! それ、僕が特級扱いで出したやつ! 誰かさんがラムダを帰しちゃったからねぇ……」
フェリクスが口を挟み、隣に立つ男をぎろりと睨んだ。