【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 しばしの沈黙がそこにあった。
 ジルベルトは、ふ、と息を吐き、一度まばたきをしてフェルナンドの鋭い眼光から目を逸らせた。

「ああ、フェルナンド……君の言う通りだ。だが結論を出すまで、少し時間をくれないか?」

 今度はフェルナンドが嘆息をする。
 そしてくるりと踵を返すと、

「……そろそろ頭を冷やせ」

 政務机に背を向けたままそう言い、執務室の扉を勢い良く閉めて退室してしまう。

「お——怖っ! まるで旦那に浮気された醜女だな。あの大公閣下まで出て来たんじゃ、ガルヴァリエ公爵令嬢との婚約は免れなさそうですね。……で、どうするんですか?」

 フェリクスの問いかけに答えることなく。
 ジルベルトは机上の書類に視線を落とし、ただ黙々と政務を続けるのだった。

 
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