【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 ——今夜はもう眠ったのね。きっとお疲れなのですね。

 頬に触れる固い胸板がゆっくりと動いて、マリアの大切なものが、深い呼吸を繰り返しているのがわかる。
 抱きしめられているせいで顔が見えないので、寝台に入ってしばらくは、まるで探るようにジルベルトの寝息に耳を凝らすのだ。

 眠ったかな……。政務のお悩みで、今夜は眠れないのかな。

 いくらごまかそうとしても、マリアのたぬき寝入りはすぐに見抜かれてしまう。ぽふ、と大きな手に頭を包まれ、

「俺のことはいいから。早く眠って」

 そんなことが度々(たびたび)あった。
 そしてジルベルトが眠ったとわかれば、マリアもやっと安心して目を閉じるのだった。


 だが——今夜に限っては、とても《《眠れたものじゃない》》事情があった。

 寝台に入る前、尋ねてみたのだ。
 これまでずっとマリアの胸の中でくすぶり続けていたことを。
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