【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
『ウェインの牢に囚われていた頃、あなたは或る人物を探している、と仰っていましたが——。その人はもう見つかったのですか? ぁっ、その……ふと、気になったものですから……』

 当時はジルベルトの素性を知らず考えもしなかったけれど、或る人物、というのは王女リュシエンヌの事ではないか。
 もしもそうなら、捜索の状況や、帝国がリュシエンヌに関して把握している情報が聞けるかもしれない。

 だがそれを尋ねることはマリアにとって諸刃の剣でもあり、口に出す事さえも怖くて、今までずっと聞くのを躊躇ってきた。

 ジルベルトは明らかにわかるほど表情を曇らせ、形良い眉をひそめた。

『ああ……探し続けている。だがあまりに情報が乏しいがために、最近になってその者は既にこの世を去っているのではないかという噂が立ちはじめた。真偽はわからぬが』

 誰を、とは言わぬものの。
 ジルベルトが探していると言った人物は王女リュシエンヌで間違いなかろう。マリアはそう確信した。

『もう死んでいるかも知れない人を、何のために……探し続けるのですか?』

 ジルベルトはしばらく思案げな顔をしていたが、
< 326 / 580 >

この作品をシェア

pagetop