【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「———ッ!!」
咄嗟に横たわっていた身体を反転させ、寝台の脇に備えた短剣を素早く手に取る。《《目の前の女》》を組み敷き、無我夢中で短剣の切っ尖をぐさりと突き刺した———
何かにずぶりと刺さる確かな手応えに、ハッ、と目を覚ます。
視界に飛び込んできたのは……アメジストの瞳を張り裂けんばかりに見開いて、組み敷くジルベルトを見上げるマリアの恐怖に怯えた顔だった。
マリアの耳元を掠った短剣が枕元に深く突き刺さっている。
先ほど感じた強い衝撃を思えば、剣先はおそらく寝台にも達する。血が滲むほどに強くその剣の柄を握るのはジルベルトの手だ。
「……………!?」
マリアの耳朶からじわりと赤いものが滲み、小さな雫となって白い枕にぽたりと落ちた。
あと少し剣がずれていたら———鋭利な切っ尖は、マリアの頭部を突き刺し貫通していただろう。
「マリア…………!」
慌てて寝台から剣を引き抜き、脇に放り投げる。ガランと重い音を立てて、短剣が床に転がった。
何も持たなくなった右手がわなわなと震えはじめる。ジルベルトはその震える手で、血が滲んだマリアの耳朶にそっとふれた。まるで何かを慎重に確かめるように。
「ああ、俺は………なんてことを、した……」
夢の中の黒い女は王女リュシエンヌの虚影に違いなかった。夢と現実との見境いも付けられずに、マリアを殺しかけた。
かろうじて刃は逸れたものの、この愛らしいものを傷つけてしまうなんて。
咄嗟に横たわっていた身体を反転させ、寝台の脇に備えた短剣を素早く手に取る。《《目の前の女》》を組み敷き、無我夢中で短剣の切っ尖をぐさりと突き刺した———
何かにずぶりと刺さる確かな手応えに、ハッ、と目を覚ます。
視界に飛び込んできたのは……アメジストの瞳を張り裂けんばかりに見開いて、組み敷くジルベルトを見上げるマリアの恐怖に怯えた顔だった。
マリアの耳元を掠った短剣が枕元に深く突き刺さっている。
先ほど感じた強い衝撃を思えば、剣先はおそらく寝台にも達する。血が滲むほどに強くその剣の柄を握るのはジルベルトの手だ。
「……………!?」
マリアの耳朶からじわりと赤いものが滲み、小さな雫となって白い枕にぽたりと落ちた。
あと少し剣がずれていたら———鋭利な切っ尖は、マリアの頭部を突き刺し貫通していただろう。
「マリア…………!」
慌てて寝台から剣を引き抜き、脇に放り投げる。ガランと重い音を立てて、短剣が床に転がった。
何も持たなくなった右手がわなわなと震えはじめる。ジルベルトはその震える手で、血が滲んだマリアの耳朶にそっとふれた。まるで何かを慎重に確かめるように。
「ああ、俺は………なんてことを、した……」
夢の中の黒い女は王女リュシエンヌの虚影に違いなかった。夢と現実との見境いも付けられずに、マリアを殺しかけた。
かろうじて刃は逸れたものの、この愛らしいものを傷つけてしまうなんて。