【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 *甘砂糖プラスのおまけエピソードです。
 ゆるめですが大人向けな内容です。
 甘々が苦手な方は読まれなくても差し支えありません*

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 突然のくちづけは、一度ふれるだけの軽いもの。
 予想に反したくちづけに意表を突かれたのか、マリアの瞳がわずかに揺れた。

 頬を紅く上気させ、ジルベルトの視線から顔を逸らそうと俯いたその瞳が滲ませたのは、拒絶ではなく恥じらいの色。
 まるで許しを請うような碧い瞳はそれを見逃さない。

 伸びた手の親指がマリアのふくりと厚い唇をなぞる。
 そのまま顎を持ち上げられて、息を吸おうと少しだけ開けた唇を今度は大きく喰まれた。

 かすかに震えた唇を呼吸ごと飲み込んで、(むさぼ)るようにくちづけられる。漏れる声すら許さぬほど、深く、何度も。
 意識がぼうっとし始めた頃、やっと解放された。

「……ま、って……息……がっ」

 初心のマリアはその最中の呼吸のしかたがわからない。
 アメジストの瞳を苦しげに眇めて、肩で息をするのを繰り返す。

 ジルベルトがかすかに笑ったような気がした。
 碧い瞳がゆっくりと瞬きをしながら、声を漏らす間もなく唇を重ねる。

 今度は焦らすように優しく甘く、丁寧に。
 時おり顔をのぞかせる獰猛さは、マリアの奥に予想もしていなかった熱欲の火を灯した。
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